アルド・バッカー

「タイムラプス」

2017.7.27(木)~9.26(火)

アート&カルチャー

ファスト化する商品経済に抗うように、アルド・バッカーはオブジェにじっくりと向きあい時間をかけて作品をつくります。水差し、ボウル、スプーン、スツール、ベンチ、テーブルなどが、温室のようなスタジオでゆっくりと成長していくのです。時には優秀な技術者や職人たちが世話をします。作者の手を離れてからも事情は変わりません。作品の魅力を十分に堪能するためには、観賞者は時間をかけて集中してオブジェに向きあわなくてはなりません。そうでなくては、目に見える美しさ以上のものを感じとることはできないでしょう。バッカーのオブジェは、時間の経過や環境の変化をしなやかに受けとめます。さまざまな意味を折り込んだ作品は、時間とともに成熟し、あらゆる状況をのりこえていきます。

アルド・バッカーがもっとも関心をよせるのは、オブジェと時間との関係です。エルメスから「オブジェに宿るもの」というテーマでウィンドウディスプレイの制作依頼があったとき、彼は長年リサーチを続けている「時間」というテーマを思い浮かべました。それをもとにバッカーのスタジオが発展させた答えは、影によって時間を表現することでした。影は、ディスプレイに情緒を加え、動きと連続性をもたらします。入口の正面右側の大きなウィンドウには、秋冬プレタポルテを着たマネキンがのどかな田園風景のうちに立っています。壁には、木組みの小屋を思わせる大きな影がさしています。その影は、バッカーの代表作となった木製スツール『スウィング』の足元から伸びていますが、このスツールもまた試作に試作を重ね、時間をかけて完成した作品なのです。

正面左側のウィンドウには謎めいた雰囲気がただよい、壁にはやはりバッカーの作品であるブロンズ製の『トーヌス』が影をなげかけています。田園風景のウィンドウには明るい陽差しがあふれ、床に鶴の影が落ちていましたが、反対側では暗くなった夕空を背景に、一羽の鶴が優雅に羽ばたく姿が描かれています。バッカーにとって、鶴は東洋文化を象徴しています。そしてどちらのウィンドウにも、美しい光沢を帯びたイチョウの葉が散らばっています。

16個の小窓には、エルメスのオブジェがそれぞれ異なる影とともに展示されています。影を添えることでオブジェの特徴が際立ち、未知の側面が浮かびあがります。オブジェの新たな一面を引き出す、タイムラプス(微速度撮影)ムービー。それぞれの小窓はムービーの一コマとなり、16からなるコラージュ作品として構成されています。

アーティストプロフィール


アルド・バッカー Aldo Bakker
アルド・バッカー(1971年生まれ)の作品には、フォルム、素材、色彩の美しさと、驚くべき頑迷さが共存している。彼の作品は、人間とオブジェの関係(より正確に言えば「オブジェと人間の関係」)をめぐる日常的な知覚にどこまでも抵抗する。
バッカーの作品の多くは一点物だが、ものによっては小型版が作られることもある。個人的な作品制作とは別に、各国の企業、たとえば、ジョージ・ジェンセン、キャラクター、ピュイフォルカ、セーブル、スワロフスキーなどからも制作を依頼される。彼の作品は、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(ロッテルダム)、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館(ニューヨーク)、MUDAC現代デザイン応用芸術美術館(ローザンヌ)、フィラデルフィア美術館、アムステルダム市立美術館、ポンピドーセンター(パリ)などに収蔵されている。2016年と2017年には、これまでの業績を概括する「Pause」展が開催された(CIDグラン・オルニュ/MUDAC現代デザイン応用芸術美術館)。