マックス・ラム

「Resolution」

2017.3.17(金)~2017.5.16(火)

アート&カルチャー

「Resolution」(レゾリューション)と名付けられたこの手の痕跡の残る台座の連作は、イギリス出身のデザイナー、マックス・ラムが、2017年の年間テーマ「オブジェに宿るもの」に応えて製作したものです。どの台座も、エルメスのものづくりと深くかかわる素材や技術をもちいて手づくりで製作されました。台座のうえには、それぞれの台座に近い素材と技術をつかったエルメスの製品がのっています。近い素材と技術といっても、エルメスの製品は、台座よりもはるかに高いレベルでつくられています。エルメスの品質、匠の技を強調するために、台座はあえて手の痕跡を残した「ローレゾ」でつくられました。また、台座のうしろのモニターには、低解像度(ローレゾ)の映像によって台座の制作過程が映しだされます。巨大な手がハンマーを打ちおろし、鑿(のみ)をつかい、彫り、素材を巧みにあやつりながら、形を仕上げていきます。手と素材と製品のつながりを表現した映像が、最先端とノスタルジーの入りまじった銀座の街、ハイスピードで繰り返されるこの街の風景に華やかなアクセントをくわえます。

デジタル化が進むこの世界では、手づくりの意味が忘れられつつあると、マックス・ラムは考えます。ほぼすべての商品が、機械をつかって大量生産されており、しかも、わたしたちはそのことに疑問さえ抱かなくなっています。普段の生活でつかう品物には、もはや、人の手の気配は感じられません。あるいは単に、そう思い込んでいるせいで、何も見えなくなっているのかもしれません。その一方で、優れた職人たちが、世界中のあらゆる場所で、自らの技を極めています。見る目をもたない者にとって、職人たちの匠の技は、機械で作られた商品と同じに映るかもしれません。しかし、職人の仕事はあくまで「ハイレゾ(高解像度)」を規範とするのです。

マックス・ラムは、「レゾリューション」をコンセプトに掲げ、自らの手ですべての台座をロンドンの小さな工房でつくりました。ラムが用いた技法は多岐にわたりますが、その大半は、昔ながらの職人技です。ラムの台座はどれもてらいがなく率直で、台座の役割に徹しています。その素朴さがつねに良い結果をもたらすとは限りませんが、最終的にはいつも、手をつかわなければ決して到達できない精度(レゾリューション)に達します。モニターに映し出された映像の解像度(レゾリューション)もまた、手しごとやデザインにかかわる重要な要素であり、画面には、原材料を機能的な製品に変えていく技術が映しだされます。その技術を学びさえすれば、誰もが美しく便利なオブジェをつくれるのです。

アーティスト・プロフィール:マックス・ラム
家具デザイナー。1980年、イギリスのコーンウォールに生まれる。幼い頃から、身の回りのものを壊したり組み立てたり、野山を駈けまわったりして遊んでいた。好奇心から、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのデザイン・プロダクツ修士課程に進学し、その後は現在にいたるまで、ワークショップに基づくデザイン活動を行っている。

マックス・ラムの作品は、無駄なディテールを削ぎおとしたシンプルなフォルムを特徴とする。ラムの作品はつねに誠実であり、その誠実さは、決してぶれないラム自身の姿勢に由来する。素材に正直であること、プロセスを重んじること、人間の可能性と限界を称えること。マックス・ラムは、実験と原理を組み合わせながら、正直で、分かりやすく、時代を超えた家具や作品をつくっている。

ロンドンやニューヨークのギャラリーに所属し、個人や公共団体から注文をうけて作品を制作するとともに量産品も手がける。スイスのローザンヌ美術大学、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで教鞭をとり、世界中の企業や機関でデザインのワークショップを行う。主な展覧会に「My Grandfather’s Tree」展(ロンドン、2015年)「Exercises in Seating」展(ミラノ、2015年)など。HSBC Design Collection Commission(2010年)、Design Miami/Basel Designer of the Future(2008年)など受賞多数。
www.maxlamb.org