中村 ⾄男

「エルメスのある部屋」

2017.1.19(木)~2017.3.16(木)

アート&カルチャー

銀座メゾンエルメスのウィンドウが新しくなりました。


誰もいない部屋。テーブルにはティーポット、ソファのうえにはバッグが置いてあります。どんな人が住んでいるのか、そこで何をしていたのか、これから何が起ころうとしているのか。ものをとおして部屋を見てみると、様々なストーリーが浮かんできます。

2017年のエルメスのテーマ、「オブジェに宿るもの」。
オブジェには時代や流行、持ち主のセンスだけでなく、それを手に取った理由、それが果たす機能など、様々な意味が宿っています。

正面のウィンドウでは同じシーンが異なる視点で展開されています。バッグ越しに見るティーポット、ティーポット越しに見るバッグ。二つの視点がイラストとオブジェによって大胆な遠近法で立体的に表現され、まるでティーポットとバッグが二人の登場人物として見つめ合っているような緊張感が、どこからか沸き起こってきます。

グラフィックデザイナーの中村至男は、シンプルなグラフィックで言葉を介さずに意味を伝え、「ピンとくる」感覚を引き起こします。人間の脳は、少ない情報の中でも感覚と経験で積極的に物事を理解しようとします。ものや環境の特徴を絶妙なバランスと色使いで描き出す中村のイラストでは、モチーフが省略もしくはデフォルメされていて、私たちの想像力を膨らませるきっかけを与えています。

さて、この部屋の持ち主は大のエルメス好きのようで、様々な場面にエルメスのオブジェが見受けられます。ところが部屋を別の角度から見てみると、どうやらエルメスが好きなのは部屋の持ち主だけではないようですが……。


アーティスト・プロフィール:中村至男
アートディレクター/グラフィックデザイナー。
川崎市生まれ。日本大学芸術学部卒業後、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントを経て独立。著書に、『どっとこ どうぶつえん』、『はかせのふしぎなプール』、『勝手に広告』(佐藤雅彦との共著)、『明和電機の広告デザイン』(土佐信道との共著)など。主な受賞に、ニューヨークADC銀賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞、東京ADC賞、東京TDC賞など。絵本『どっとこ どうぶつえん』で、ボローニャ・ラガッツィ賞優秀賞。