小田康平

「旅の途中」

2016.7.14(木)~9.26(月)

イベントアート&カルチャー

今回は、サボテンを専門とする植物家、小田康平による「旅の途中」というディスプレイです。


自然界には人間の感性と時間の感覚では捉えきれない生命が息づいています。適度な日光と水と大気を得て、健やかに生長する青々とした緑の植物とは対照的に、生きているのか死んでいるのか、肉眼には区別がつかないような植物も確実に呼吸をしているのです。今回はサボテンを専門とした植物家の小田康平を迎え、植物への固定観念を覆すような風景をつくります。

WIN_JP_2016_GINZA_jul(1)ウィンドウのなかの丘陵は、放射線状に渦を巻いた球形のもの、風になびくように生えているひょろ長いもの、白い毛で覆われた繭玉のようなもの、黄金色の刺によってシルエットが輝くものなど、見たこともないような物体に覆われています。これらが植物だと気付くには、しばらく観察する必要があるかもしれません。

この空間にあるサボテンは、我々の植物の常識を覆すものです。水をほとんど必要としない、日光から身を守るために毛をまとう、大きくなればなるほど危険が増すので、身を小さくしたまま生長しない、など。どれも、快適な場所ではなく過酷な環境のなかで何百年もの間、生命をつなぐことだけを目的に生きている植物です。そんな植物が繁茂する世界に降り立った一組の人間は、見慣れない生命を手に、何を考えるのでしょうか?

小窓には乾燥した植物が飾られています。水分を失った植物の抜け殻は、色彩や張りを失う代わりに美しいシルエットを際立たせています。見慣れない植物の表情は何かの形を連想させ、エルメスの製品はそうした個性的な表情に絡み合うように装飾されています。

自然の条件に適応しながら、姿かたちを変えて生き延びてきた植物は、人間が持つ植物の美しさの観念を覆します。そんな自然の強さを代弁する存在と、人間が引き継いできた技術と美意識の産物であるエルメスの製品が、「自然」というテーマのもとに共存しています。


Artist Profile: 小田康平(Kohei Oda)
1976年広島生まれ。世界中を旅していた20代の頃、旅先で訪れたパリで、フラワーアーティストがセレクトショップの空間演出を手掛ける様子に感動。帰国後、生花と観葉植物による空間デザインに取り組む。画一的な花や植物での表現に限界を感じ始めていたある日、納品の過程で傷ついた植物を見たあるアートコレクターの一言、「闘う植物は美しい」に衝撃を受け、植物選びの基準を「いい顔」をしているかどうかという点に定める。その後、植物の美しさを独自の視点で捉え、収集した一点物の植物を扱うことを決心し、2012年に植物屋「叢 – Qusamura」を始める。