演じる。遊ぶ。プレイフルな人生!:囚われの手合わせ

『チェス狂』『とらんぷ譚(ものがたり)』

2018.12.1(土)~ 2018.12.24(月・祝)

アート&カルチャー

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2018年のテーマは「演じる。遊ぶ。プレイフルな人生!」。
12月はゲームに魅入られた男たちのコメディ2本をお届けします。


『チェス狂』Chess Fever
1925年/ソビエト連邦/28分/モノクロ
監督:フセヴォロド・プドフキン、ニコライ・シピコフスキー

『とらんぷ譚(ものがたり)』Le Roman d’un Tricheur
1936年/フランス/81分/モノクロ
監督:サッシャ・ギトリ

12月のル・ステュディオでは、ゲームに取り憑かれた主人公たちの、運命をコメディー作品でご紹介。
ソ連の巨匠、フセヴォロド・プドフキンがニコライ・シピコフスキーと共に監督した、サイレントの短編『チェス狂』では、結婚祝いよりもチェスに夢中な主人公と、彼に頭を悩ませる婚約者が巻き起こす騒動をテンポよく描写する。フランスの映画監督で、演劇界でも活躍したサッシャ・ギトリが、自ら書いた原作を基に監督・脚本・主演した『とらんぷ譚(ものがたり)』は、一夜にして天涯孤独となった少年の波乱万丈な人生を、ギトリ特有の軽快なユーモアを交えながらモノローグ形式で辿ってゆく。人生の極意が詰まった珠玉の喜劇二連発。


『チェス狂』『とらんぶ譚』
アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

今年の映画プログラム「演じる。遊ぶ。プレイフルな人生」を閉じるにあたり、あえて定石を外し、遊びにのめりこむ情熱とその恐ろしさをとりあげたい。紹介するのは、ドタバタ喜劇とアイロニカルな作品の2本である。
1920年代のロシア映画は、映画の実験室として知られた。しかし、その実験室では、むずかしい作品だけでなく、笑える作品もつくられた。偉大な映画監督にして理論家でもあるフセヴォロド・プドフキンの『チェス狂』は、まさに笑える傑作である。
主人公は、強迫症ぎみのチェス選手。寝ても覚めても、どこにいても、チェスのことが頭をはなれない。白黒の格子を見るとつい引き寄せられ、建物や風景、洋服やアクセサリーなど、目にするものすべてがチェス盤に見えてしまう。そんな奇妙な状況と突拍子もない出会いが、次から次へと、リズミカルにモンタージュされていくのである。モスクワで開催されたチェスの世界選手権の期間中に撮影された本作には、当時のニュース映像がたくみに取り入れられている。古い映像が、歴史的な価値を帯びてよみがえる。チェスの専門家なら、本物のチェスチャンピオンが出演していることに気づくだろうし、映画好きであれば、脇役のなかにソビエト映画のビッグネームを見つけるかもしれない。どの出演者も、この作品に参加していることを心から楽しんでいる。映画を見ている私たちまで、愉快な気分になってくる。
サッシャ・ギトリの作品には、ペテン師が登場する。このペテン師にとって、ギャンブルは生活の一部であり、豊かな未来への希望そのものである。子供のころに、親の金を盗んで受けた罰のおかげで死を免れ、正直者は損をすると心に刻んだ。若くして悪に染まり、不道徳な人間が得をすれば快哉を叫び、詐欺や盗みをはたらいて生きてきたとうそぶく。この歪んだ道徳観の裏には、人間の弱さをえぐる辛辣な観察眼が秘められている。ペテン師は幼いころから、人間の欲深さや裏切りに接し、戦争や犯罪を経験してきたのだ。そして、数多くの女性と付き合ってきたのである。
この作品は、始めから終わりまで、サッシャ・ギトリの特徴的な声とウィットに富んだ語りで進行する。唯一の対話場面をのぞいて、原作者・役者・監督を兼ねるギトリのモノローグだけで物語が進むのだ。ギトリのナレーションは、登場人物に話しかけ、画面を越えて観客にも語りかける。舞台出身のギトリは観客受けする長台詞を好んだが、演劇をそのまま映画にする気はまったくなく、映画独自の手法をさまざまに駆使した。独特のナレーションの他にも、たとえば、時間の流れを一瞬で表現したり、映像のリズムに変化をつけたり、冒頭のタイトルバックをひとつの場面として独立させたりといった工夫をこらした(最後の手法は特にオーソン・ウェルズに影響をあたえた)。
『とらんぶ譚』の独創性には、現代の観客も驚くだろう。制作に関わった裏方たちを画面に登場させたり、演出や編集の痕跡は見せないという暗黙のルールを破るなど、ギトリはいわゆる「現代映画」の手法を時代に先駆けて用いたのである。

上映スケジュール


上映日: 12月1日(土)、12月2日(日)、12月8日(土)、12月9日(日)、12月15日(土)、12月16日(日)、12月22日(土)、12月23日(日)、12月24日(月・祝)

上映時間


11:00/14:00/17:00

※2作品連続上映(約109分/ブルーレイ)

会場


銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

予約


予約開始:11月10日(土)11:00
予約方法:11月10日以降、「予約」ボタンよりご予約ください。

※上映会は、中学生以上の方にご参加いただけます。
※ご予約は、鑑賞ご希望の上映日の3週間前の11:00からとなります。
※満席の場合にはご予約頂けませんが、当日キャンセルのあった場合は、会場にて先着順でご鑑賞いただけます。(上映時間5分前に会場に直接お越しください。)
※本プログラムはブルーレイによる上映となります。

お知らせ
2019年のル・ステュディオは、3月以降開始予定です。

詳細は随時、本サイトにてお知らせいたします。
来年も皆様にお楽しみいただけるプログラムを目指して参りますので、引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。