オブジェに宿るもの:運命の環

『たそがれの女心』

2017.8.5(土)〜 8.27(日)

アート&カルチャー

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2017年は「オブジェに宿るもの」をテーマにお届けいたします。
8月は、ダイヤのイヤリングをめぐる運命のいたずらを描いた『たそがれの女心』を上映いたします。


『たそがれの女心』Madame de…
1953年/フランス=イタリア/96分/モノクロ/ブルーレイ

監督:マックス・オフュルス
脚本:マルセル・アシャール、マックス・オフュルス、アネット・ヴァドマン
原作:ルイズ・ドゥ・ヴィルモラン
撮影:クリスティアン・マトラ
音楽:オスカル・シュトラウス、ジョルジュ・ヴァン・パリス
出演:ダニエル・ダリュー、シャルル・ボワイエ、ヴィットリオ・デ・シーカ、ジャン・トビュクール、リア・ディ・レオ

舞台は20世紀初頭、ベル・エポックの華やかなパリ社交界に一際輝く貴婦人がいた。名はマダム・ドゥ…。彼女は浪費による借金を返済するために、将軍である夫から結婚祝いに貰ったダイヤのイヤリングをひそかに売ってしまう。真相を知った将軍に買い戻されたイヤリングは、その後将軍の愛人へ、そしてドナティ男爵へと次々に持ち主を変え、再びマダムの元へと戻ってくる。冷めた愛の象徴であった宝石が、運命のいたずらに弄ばれる上流階級の男女の人間模様をさまざまに映し出しながら、まったく異なった意味をもち始める。眩い愛の輝きを帯びるドラマを流麗なカメラワークで描く、名匠マックス・オフュルスの逸品。


『たそがれの女心』
アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

『マダム・ドゥ…』という原題のとおり、美しい貴婦人の苗字は最後まで明かされない。彼女には夫人としての役割しかなく、その暮らしは舞踏会やオペラ座に出かけて新しい服を見せびらかす以外にほとんど何もすることがない。
映画は、夫人の衣装部屋から始まる。クローゼットには豪華な毛皮が並び、宝石箱にはダイヤモンドのアクセサリーがあふれる。そのなかのひとつ、シンプルな耳飾りを軸に物語は展開する。このダイヤの耳飾りをきっかけに、映画は、社交界を舞台とする上品なコメディとして幕をあけ、悲劇として幕を閉じる。
軽やかさと重々しさを合わせもった『たそがれの女心』は、マックス・オフュルスの作品の特徴を良くあらわしている。オフュルスの傑作はどれも本作と同じように20世紀直前の古きヨーロッパを背景に、贅沢と快楽の世界を壮麗なセットによって再現する。ヒロインは、しばしば、不毛の愛に翻弄される夢見がちな若い女として描かれる。
恋に落ちた2人がワルツを踊りつづけるように、この作品もまた休みなく動きつづける。ダイヤの耳飾りは人の手から手へと渡り、カメラは登場人物の心の動きにあわせて流れるように移動する。流麗なカメラワークが、人生の変転をたどり、運命のいたずらを追いかける。
3人の主役はいずれも絶妙の演技をみせる。夫人と夫と恋人はあくまで慇懃に言葉を交わすが、その言葉の裏にはいつも皮肉と残酷さが隠されている。礼儀にそむき、情熱的にふるまうことを禁じる上流社会の欺瞞を、オフュルスはこうして暴きたてる。しかし、ダニエル・ダリューとヴィットリオ・デ・シーカがお互いの瞳を見つめ、豪奢な大広間でワルツを踊るとき、オフュルスはこの夢のような時代にノスタルジーを感じている。ベルエポックと呼ばれるこの時代の住人たちは、じぶんたちの世界が間もなく終わることを知らなかった。

上映スケジュール


上映日:8月5日(土)、8月6日(日)、8月11日(金・祝)、8月12日(土)、8月13日(日)、8月19日(土)、8月20日(日)、8月26日(土)、8月27日(日)

上映時間


11:00/14:00/17:00

会場


銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

予約


予約開始:7月15日(土)11:00
予約方法:7月15日以降、「予約」ボタンよりご予約ください。

※上映会は、中学生以上の方にご参加いただけます。
※ご予約は、鑑賞ご希望の上映日の3週間前の11:00からとなります。
※満席の場合にはご予約頂けませんが、当日キャンセルのあった場合は、会場にて先着順でご鑑賞いただけます。(上映時間5分前に会場に直接お越しください。)