自然――軽やかなギャロップ:野獣の美

『美女と野獣』

2016.12.3(土)~12.25(日)

アート&カルチャー

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2016年は「自然 ― 軽やかなギャロップ」をテーマにお届けいたします。
12月はファンタジーの傑作『美女と野獣』をご紹介します。


『美女と野獣』La Belle et la Bête
1946年/フランス/93分/モノクロ/DVD

監督・脚本:ジャン・コクトー
共同監督:ルネ・クレマン
原作:ジャンヌ=マリー・ルプランス・ドゥ・ボーモン
撮影:アンリ・アルカン
衣裳:マルセル・エスコフィエ
音楽:ジョルジュ・オーリック
出演:ジャン・マレー、ジョゼット・デイ、ミシェル・オークレール、マルセル・アンドレー

三人の娘をもつ男がある日、優しく美しい末娘・ベルのためにバラの花を摘もうと庭園へ忍び込む。庭の主である野獣は怒り、バラを盗んだ罰に命か娘を一人差し出せと言う。窮地の父を救うため、自ら犠牲となった心優しきベル。城へと迎えられ、野獣の醜怪な容貌を恐れていたベルだったが、次第に彼の優しい心に幸福な自分を見出し……。
「人を外見で判断してはいけない」という、子供への教育事業に打ち込んでいたボーモン夫人ならではの童話を原作に、自ら脚本を手掛け、幻想的かつ優美で詩的な映画に仕上げたのはジャン・コクトー監督。40年代に撮影されたとは思えないリアルな特殊メイクや豪華絢爛な衣裳、夢のように美しいラストシーンの昂揚……。1946年ルイ・デリュック賞を受賞した本作は、愛の力を描くファンタジーの傑作である。


『美女と野獣』
アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

撮影をはじめたとき、ジャン・コクトーは果たして気づいていただろうか。この作品が、半獣半人の怪物を永遠の存在にするということを……。コクトー自身が言うように、『美女と野獣』は、かれにとって初めての「大がかりな映画」となった。数多くの芸術家によって表現されてきた化物が、このとき、そのもっとも美しい姿をスクリーンにあらわした。コクトーのお気に入りの俳優でありミューズでもあったジャン・マレーが、異形のマスクをかぶり、人間性と動物性が混ざりあったモンスターを悲哀を込めて見事に演じきった。

コクトーの野獣は、スフィンクス、サチュロス、狼男といった神話的存在の末裔である。異種混交の怪物たちは、人間の二面性を象徴するだけでなく、悪の魅力を体現する。ベルの心をひきつけ、愛に目覚めさせたのも、動物的な荒々しさではなかったか。これまでずっと父親に尽くしてきた純真無垢の少女が、その初恋の相手にえらんだのは、以前から声をかけられていた感じのよい若者ではなく、顔も腕も毛むくじゃらの紳士だった。

怖い思いがしてみたい。未知の感情に向きあいながら、ベルはそんな言葉をささやく。たとえそれが自然に反することであっても、少女は野獣のそばで生きることを決意する。そして少しずつ、男が怪物であることを忘れていく。大島渚が数十年後に撮った『マックス、モン・アムール』が思い出される。ただし大島渚の場合は、リアリズムにもとづく現代の寓話であった。

『美女と野獣』は、映像によって紡がれたおとぎ話である。多くの作家たちが、今日でもなおこの作品に負けじと対抗心を燃やす。詩人であり画家でもあったコクトーが生みだした作品は、映像の美しさと幻想性によって、時代を超えて観客を魅了しつづけている。
おとぎ話の世界では、野獣の城はいつも森の奥深くに隠されており、森のなかでは奇妙な出来事がつぎつぎと起きる。超自然的な力を表現するために、コクトーは旧式の特殊撮影をつかった。前衛的な無声映画をおもわせる詩的映像は、現代の先端技術ではかえって再現できないだろう。

彫像の目がうごき、鏡が偽りを映しだす。こどもの心をとりもどさなくても、わたしたちは魔法の国に入っていけるのだ。

上映スケジュール


上映日:12月3日(土)、12月4日(日)、12月10日(土)、12月11日(日)、12月17日(土)、12月18日(日)、12月23日(金・祝)、12月24日(土)、12月25日(日)

上映時間


11:00/14:00/17:00

会場


銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

予約


予約開始:11月12日(土)11:00
予約方法:11月12日(土)以降、「予約」ボタンよりご予約ください。

※ご予約は、鑑賞ご希望の上映日の3週間前の11:00からとなります。
※満席の場合にはご予約頂けませんが、当日キャンセルのあった場合は、会場にて先着順でご鑑賞いただけます。(上映時間5分前に会場に直接お越しください。)

お知らせ
2017年のル・ステュディオは、3月以降開始予定です。

詳細は随時、本サイトにてお知らせいたします。
来年も皆様にお楽しみいただけるプログラムを目指して参りますので、引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。