フラヌール - いつでも、そぞろ歩き:鏡の向こう側

『Dr.パルナサスの鏡』

2015.12.5(土)〜12.27(日)

アート&カルチャー

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2015年は『フラヌール - いつでも、そぞろ歩き。』をテーマにお届けいたします。
12月は、鬼才、テリー・ギリアム監督が自身の人生を投影したダーク・ファンタジー『Dr.パルナサスの鏡』です。


『Dr.パルナサスの鏡』 The Imaginarium of Doctor Parnassus by Terry Gilliam
2009年/イギリス=カナダ/124分/カラー/35mm

監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム、チャールズ・マッケオン
撮影監督:ニコラ・ペコリーニ
編集:ミック・オーズリー
音楽:マイケル・ダナ、ジェフ・ダナ
オリジナルデザイン&アートディレクション:デイヴ・ウォーレン
出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル、リリー・コール、アンドリュー・ガーフィールド、ヴァーン・トロイヤー、トム・ウェイツ
配給:ショウゲート

不死と引き換えに、最愛の娘を悪魔に差し出す契約を交わしてしまったパルナサス博士。タイムリミットは3日後。博士は記憶喪失の青年トニーとともに、鏡の迷宮で最後の賭けに出るが……。
トニー役のヒース・レジャーが撮影中に急逝。製作の危機を救ったのは、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルら友人たちだった。彼の役を引き継いだ3人の個性が、ギリアムらしいギミックやイマジネーションをいっそう引き立てている。


『Dr.パルナサスの鏡』
アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

今日の映画界で、テリー・ギリアム以上に「空想の映画監督」と呼ぶにふさわしい監督がいるだろうか。もしかすると、ティム・バートンならばギリアムと肩を並べられるかもしれない。ティム・バートンの憂いを帯びたファンタジーにはギリアムの想像世界に匹敵するところがあるだろうし、『アリス・イン・ワンダーランド』に描かれた冒険譚は、『Dr.パルナサスの鏡』に登場する旅芸人一座の活躍を彷彿とさせる。

この旅芸人一座の出し物は、人々の隠された欲望を形にする幻想館「イマジナリウム」である。人々の欲望を描くために、ギリアムは、ファウスト、ルイス・キャロル、オズの魔法使い、そして映画の魔術師ジョルジュ・メリエスを総動員した。ギリアムは、メリエスに勝るとも劣らない卓越した物語作家として知られる。ギリアムの物語は、古代神話やおとぎ話、意識下の欲望や夢の世界を思わせる。本作でも、愉快な物語のあちこちに、ひとめでギリアムのスタイルと分かる特徴的な映像や語り口がみられる。大道具や小道具はどれも奇抜かつ時代錯誤的であり、アニメーションやダンスがしばしば唐突に挿入される。ギリアムがあの神話的なコメディ集団モンティ・パイソンのメンバーだった頃から持っていた過剰さへの嗜好とパロディーの感覚も、全篇をつうじて遺憾なく発揮されている。

30年前に公開された『未来世紀ブラジル』(1985年)の主人公は、ブロンドの女性と大空を駆ける夢に耽っていた。その頃にくらべれば、ギリアムの幻想は驚くほど自由奔放になっている。先端技術を駆使しながら、ギリアムは喜々として「巨大なパンプス」や「空飛ぶクラゲ」といった奇怪な映像を作りだし、あらゆるものを怒濤のごとく変身させていく。ジョルジュ・メリエスがもし書き割りの代わりに3Dアニメーションを使っていたら、きっと同じような映像を撮っていたにちがいない。

しかし、もしギリアムの作品を外見ばかり立派で中身がないと考えるならば、それはまったくの誤りである。ギリアムは、人間が不条理な暗黒社会でテクノロジーと消費文化の犠牲になりながらも、あらゆる手段を使って生き延びようと必死に抵抗する姿を描いてきた。実を言えば、夢を売って歩くような商売はもう時代遅れである。パルナサス博士の一座は廃工場や商店街をうろつきながら、その片隅に店をひらく。もちろん、自分の心のなかを旅してみようと考える酔狂な客はめったに現れない。未知の領域に踏み込むことは、好奇心をそそりはするが、つねに危険と背中合わせなのである。

パルナサス博士の顔にときおり憂いがよぎるのも、そこに理由の一半がある。不死の生命を手にいれた老奇術師パルナサスが、ギリアム監督の分身であるとすれば、その憂いはまた、傑作をものにしようと決意したギリアム自身の苦悩でもあるだろう。ギリアムはたしかに、夢想する映画監督の最後のひとりとなってしまった。しかし、自由であるためには夢見ることが絶対に必要だと信じる人々がいるかぎり、ギリアムはこれからも祝祭のような映画を撮り続けるだろう。

上映スケジュール


12月5日(土)、12月6日(日)、12月12日(土)、12月13日(日)、12月19日(土)、12月20日(日)、12月23日(水・祝)、12月26日(土)、12月27日(日)

上映時間


11:00/14:00/17:00

会場


銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

予約


予約開始:11月14日(土)11:00
予約方法:11月14日以降、「予約」ボタンよりご予約ください。

※上映会は、中学生以上の方にご参加いただけます。
※ご予約は、鑑賞ご希望の上映日の3週間前の11:00からとなります。
※満席の場合にはご予約頂けませんが、当日キャンセルのあった場合は、会場にて先着順でご鑑賞いただけます。(上映時間5分前に会場に直接お越しください。)

お知らせ
2016年のル・ステュディオは、3月5日(土)より幕開けいたします。

来年も皆様にお楽しみいただけるプログラムを目指して参りますので、
引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。